ギーベ・ゲルラッハ。 書籍の短編リクエスト募集 |香月 美夜の活動報告

かわゆら

ギーベ・ゲルラッハ

「ヴィルフリート。 其方、ギーベを務めてみぬか?」 あまりにも突然投げかけられた、父上の言葉。 「は…?」 ポカンと開きそうになる口を閉じられただけでも、上出来であったと思う。 ギーベ? 私が? アウブになる道がほぼ無くなったとはいえ、自由に道を選べ、とおっしゃっていた父上が、なぜ今になって? 「うむ。 ゲルラッハのことで今とても困っている。 ギーベ・ゲルラッハのなり手がおらぬのだ。 」 1年前、反逆で粛清されたゲルラッハを継いでいたのは、ライゼガング系の領主だった。 けれどもアーレンスバッハから戻ってきたグラオザムのせいで、新ギーベ・ゲルラッハとその一家は惨殺され、配下の騎士団長始め多くの騎士がはるか高みに上った。 領地生え抜きの貴族たちも多く高みに上り、ゲルラッハは大変に不安定な状態に陥っている。 普通ならばゲルラッハのような領地が空けば、次のギーベ希望者が殺到するものだ。 けれどもこの2年でギーベが2度も変わった不吉な地で、騎士が激減して領地が荒れている因縁の領地に、現在は名乗りを上げる者がいない。 おまけにグラオザムがアーレンスバッハに内通し、その息子のマティアスがローゼマインに従ってアーレンスバッハに行くことで、「ゲルラッハの弱点や夏の館の秘密がアーレンスバッハに握られているのでは?」という懸念さえ持たれている。 「それだけではないのだ。 ゲルラッハの夏の館を巡る攻防で、ローゼマインが少々…館を壊したようでな。 新ギーベはそれも何とかせねばならぬ。 」 「礎を巡るディッターに巻き込まれたゲルラッハの被害が甚大だったことで、領主一族による救済が求められている向きもある。 」 そういった何やかやの理由で父上は、気乗りせぬ貴族の誰かに押し付けるよりも、一時的に直轄地として体裁を整えた方がよいと判断したようだ。 「他の直轄地とは離れているし、アーレンスバッハに隣接している大きな領地となれば、並みの代官に治められるものではあるまい。 本来ならボニファティウス伯父上にお願いするのが筋なのだが、あの方は騎士団を鍛え上げる方に向いているのでな。 」 それはそうであろう。 アーレンスバッハ事変で受けに回ったからには、ボニファティウス様はさらに苛烈に騎士団をしごくことだろう。 すでに騎士たちにはっぱをかけまくっているのだ。 ゲルラッハの統治に気を回すとは…考えにくい。 「そんなわけでな、其方やシャルロッテがゲルラッハ領を治めてみてはどうかと思ってな。 私が若いゆえ、エーレンフェストが代替わりするまでには長くかかるだろう。 其方たちがアウブやアウブの配偶者になるにせよ、領主候補生として身を立てるにせよ、ゲルラッハで領地を治める練習をするのは役立つと思うのだ。 」 父上は嬉しそうに私の顔を見てきた。 「メルヒオールはローゼマインの後を受けて、神殿長を務める。 其方たちもローゼマインが神殿を切り回していたように、実務で領主候補生の責任を負ってはどうかな? ゲルラッハはアーレンスバッハに接しているゆえヴィルフリート、騎士の訓練をしている其方の方が向いているかと思った。 けれども其方が引き受けぬというのであれば、シャルロッテに任せるつもりだ。 」 ふむ。 悪い話ではあるまい。 アウブになるにせよならぬにせよ、臨時とはいえ実務を経験する機会は歓迎すべきであろう。 「ゲルラッハを直轄地にするとは言っても期間限定で構わぬし、業績が上向けば他の貴族にギーベを任せてもよい。 そのまま治めたいのであれば領地の境界を引き直して大きくしてもよいし、将来的には境界門をゲルラッハに移してもよい。 アーレンスバッハのローゼマインと上手くやるには、その方が便利だろうからな。 」 望むならば領主候補生から退いてギーベになってもよい、その場合は便宜を図るという父上の温情か。 それは迷ってばかりの自分に対する、将来を見つめ直すこの上ない機会のように思えた…。 「ありがとうございます、父上。 ゲルラッハの件、お引き受けいたします。 」 だけどな、ローゼマイン。 夏の館のこの壊され具合は、『少々』では済まないだろうが!!.

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ハンネローレの貴族院五年生

ギーベ・ゲルラッハ

「シュトラールは旧ベルケシュトックの騎士達の姿が見当たらぬと言っていた。 あの陽動の戦場にいるのは、間違いなく旧ベルケシュトックの騎士達であろう」 フェルディナンドが陽動の戦場と言った場所は、領地の境界を越えたばかりのわたし達から最も遠い場所にある。 わたしは視力を強化して目を凝らした。 ゲルラッハのギーベ騎士団とアーレンスバッハのマントをまとった旧ベルケシュトック騎士団では、旧ベルケシュトックの方が数は多いようで、どちらかというとエーレンフェストのマントをまとうギーベ騎士団が不利なように見える。 「ゲオルギーネ様に扇動された旧ベルケシュトックのギーベ達が、エーレンフェストの土地の魔力を奪っているのです。 その目的から考えると、陽動の戦場で間違いはないですが、ゲルラッハのギーベ騎士団にとっては、自分達の背後にある夏の館を守るための主戦場だと思われます」 「養父様はエーレンフェストの各地に連絡して戦いの準備をさせました。 ギーベの夏の館には魔術具なども多く揃えられているはずです。 敵に落とされる前になるべく早く合流しましょう」 マティアスとわたしの言葉にフェルディナンドは頷いた。 陽動の戦場ではなく、主戦場と呼ぶことや夏の館を守らなければならないことには同意を示す。 「……だが、合流途中にいる旧ベルケシュトックのギーベ小隊は潰しておこう。 こちらも合流されて、数が増えすぎると厄介だ」 フェルディナンドが赤茶の土が増えていく部分を見下ろして「数の有利を活かしたい」と言った。 今の時点で見えている赤土の部分は四カ所、あちらこちらに点在している。 騎士団達が戦っている主戦場までの道中で最も近くにある赤茶けた円をフェルディナンドは指差す。 合流される前に少しでも相手の戦力を削っておきたいらしい。 「ローゼマインとハンネローレ様、それから、二人の側近達は攻撃が当たらぬだけの距離を取った上空で見張りを。 戦況の変化、魔力を奪っていく小隊の数などを見極めよ。 ローゼマイン、アウブ・エーレンフェストへ到着の連絡を。 事後承諾にはなるが、エーレンフェストでアウブ・アーレンスバッハが武力を使う許可を得よ」 「はい」 「ハイスヒッツェ、ひとまずそこの小隊を捕らえるぞ。 魔力不足のご時世だ。 できるだけ魔力は生かしておきたい」 「はっ!」 ギーベを中心にした三十人ほどの小隊に対して、アーレンスバッハとダンケルフェルガーの混合部隊百五十人が襲いかかるのだ。 よほどのことがない限り、勝利するだろう。 フェルディナンドを先頭にダンケルフェルガーの青いマントが一斉にシュタープを出した。 「フェルディナンド様、お願いがあります!」 マティアスが声を上げた。 フェルディナンドが振り返る。 「ボニファティウス様と罠を仕掛けた小屋の確認に行かせてください。 グラオザムは一刻も早く捕らえなければなりません。 けれど、彼は元ギーベであり、文官です。 騎士ではありません。 主戦場にいるかどうか……。 どちらかというと森に潜んでいる気がするのです」 「……罠の確認か……。 許可する。 ただし、隠密行動を取り、確認するだけだ。 勝手に戦闘にもつれ込むことは許さぬ。 見つけた時点で知らせろ」 「はっ! 恐れ入ります」 マティアスに許可を出したフェルディナンドはわたしとハンネローレの守りのためにダンケルフェルガーの騎士を十人増やし、小隊に向かってダンケルフェルガーの騎士達と騎獣で駆け降りていった。 「マティアス……」 悲痛な表情をしているマティアスに声をかける。 マティアスは感情の揺らぎを一瞬見せた青い瞳をきつく閉ざした。 「ゲルラッハは私が生まれ育った故郷です。 これほどひどい荒らされ方をするとは思いませんでした。 しかも、こうなるように指揮しているのがグラオザムだとは……」 自分の生まれ故郷が魔力を求める旧ベルケシュトックの貴族達に蹂躙され、次々と魔力の枯渇した赤茶の土地に変わっていく。 それを指揮するのが、かつてこの土地のギーベであった自分の父親なのだ。 マティアスの胸の内には言葉にしがたい思いが渦巻いているだろう。 強く握り締められたせいで小刻みに震えている拳からも怒りや悔しさが伝わってくる。 「グラオザムは一刻も早く捕らえなければなりません。 ローゼマイン様、大変申し訳ございませんが、ラウレンツをお貸しください。 森の中の管理小屋の所在地を他領の騎士に知らせることはできません」 「……何かあればすぐにロートを上げてくださいね」 「お約束します」 マティアスはラウレンツと二人で森に下りていく。 二人を見守っていると、レオノーレに「ローゼマイン様、わたくし達はもう少し上空へ参りましょう」と声をかけられた。 「そうですね。 養父様にオルドナンツを送らなければ……」 レオノーレの指示に従い、わたしは上空へ移動した。 そして、フェルディナンドに言われた通り、オルドナンツを飛ばす。 「養父様、ローゼマインです。 フェルディナンド様やダンケルフェルガーの騎士達と共にエーレンフェストへ到着しました。 現在地はゲルラッハ。 ゲルラッハのギーベ騎士団に加勢し、アウブ・アーレンスバッハとしてアーレンスバッハの騎士達を止め、捕らえたいと思います。 許可をお願いします」 「ローゼマイン様! まだ他の小隊がいたようです。 あちらで森の一部が消失しました」 オルドナンツが羽ばたくのとほぼ同時に、アンゲリカの声が上がった。 わたしだけではなく、ハンネローレもシュミル型の騎獣から身を乗り出すようにしてそちらを見つめる。 「森の中にはまだいくつかの小隊が潜んでいるのでしょう。 それを見極めるのもわたくし達の役目です、ローゼマイン様」 ハンネローレの言葉に頷きながら、わたしは視力を強化してゲルラッハの土地を見回す。 どれだけの数の敵が潜んでいるのかわからない。 「でも、おかしいですね。 黒の武器で魔力を奪うにせよ、奪えるのは一人分だけです。 これだけ広大な土地の魔力を人の身で受け入れられるものでしょうか?」 ハンネローレの疑問にわたしも頷いた。 自分達の土地のために奪っているにしても、三十人くらいで奪える魔力量を超えていると思うのだ。 「それに、奪うだけ奪って、その後はどうするつもりなのでしょうか? ゲオルギーネ様がこれからエーレンフェストの礎を得て、治めることを考えるならば土地の魔力を奪うのは悪手でしょう」 アウブは土地に魔力を満たさなければならないのだ。 これだけ派手に奪うと、後々自分がアウブになった後、その分を全て自分で満たさなければならなくなる。 領主候補生として土地を魔力で満たす講義を受けているハンネローレは眼下に広がる土地を見下ろしながら「確かにそうですね」と頷いた。 「礎を得て、エーレンフェストをどうするおつもりなのでしょう?」 「やはりエーレンフェストを破滅させることだけを考えて……」 レオノーレがそう言っていた時、フェルディナンド達が向かった先からオルドナンツがいくつも一斉に飛び立った。 白い小さな鳥が主戦場と他の赤茶けた円へ飛んでいく。 皆が口を閉ざして、オルドナンツの飛んでいく先をじっと見つめた。 「ローゼマイン様、オルドナンツが七羽、確認できました! 主戦場と小隊が六つで間違いないと思われます」 つまり、もう一つ小隊がいるということだろう。 「場所は確認できましたか?」 「主戦場に二羽飛んでいったようにも見えました。 騎士団と指揮をするグラオザムのところかもしれません。 すでに合流している可能性もあります」 「ローゼマイン様、小隊や主戦場から数人の斥候らしき動きをする者がいます。 こちらの存在に気付いたようです」 周囲の騎士達から次々と声が上がる中、養父様から「武力行使を許可する」というオルドナンツが飛んできた。 「フェルディナンド様、飛び立ったオルドナンツの数は七羽。 そのうちの二つが主戦場へ向かいました。 それから、アウブ・エーレンフェストから許可が出ました」 わたしがオルドナンツをフェルディナンドに飛ばす。 白い鳥が高速で飛んでいって数秒後、ドォンという爆発音がして木々がなぎ倒された。 「……許可が出た途端、派手になりましたね」 「喜々として攻撃を開始したダンケルフェルガーの騎士達の姿が見えるようです」 ハンネローレが少し申し訳なさそうに「ダンケルフェルガーの騎士達がエーレンフェストの土地を荒らしてしまいそうです」と言った。 ……仕方がないけど、もうちょっとお手柔らかにって、言いたくなるね。 圧倒的な数の有利に任せて小隊を一つ潰したフェルディナンドが、自分達に合流するようにオルドナンツを飛ばしてきた。 上空に見張りを数名残し、わたしとハンネローレは合流するために下へ向かって下りていく。 「わっ!?」 ダンケルフェルガーの騎士達の半分ほどがずわわわわっと森から飛び出してきた。 ものすごい勢いで次の小隊に向かって襲いかかっていく。 「ローゼマイン様、わたくし達はフェルディナンド様のところへ合流いたしましょう」 ハンネローレはダンケルフェルガーの騎士達をちらりと見ながらそう言った。 わたしはハンネローレに言われた通り、山吹色、藤色、青のマントが集まっているところへ合流する。 捕らえられた貴族達が三十人くらい転がっているのをフェルディナンド達が取り囲んでいるのが見えた。 「黒の武器と小聖杯が使われていた」 フェルディナンドはわたしに向かって小聖杯を振ってみせた。 どうやらギーベが持っていた物らしい。 「旧ベルケシュトックのギーベ達はゲオルギーネが礎を手に入れた暁には新しいエーレンフェストのギーベになる予定だったそうだ」 捕らえられて転がされている小隊の貴族達がわたし達を睨み上げてきた。 その視線からわたしを守るようにコルネリウス兄様とアンゲリカが場所を移動する。 「君も知っている通り、小聖杯は土地を満たすための魔力を溜めておく魔術具だ。 黒の武器を使って小聖杯にエーレンフェストの土地の魔力を溜めれば、ゲオルギーネが礎を奪う時に少し楽になる」 土地に満たされている魔力を奪うのは、礎の魔力を減らすのと同じだ。 また、小聖杯に満たされている魔力を使えば再び土地を満たすことができる。 ゲオルギーネが礎を得たら、小聖杯の魔力はエーレンフェストの土地に戻される予定だったそうだ。 そうして彼等は満たされた土地のギーベや貴族になって、自分の土地の民を移動させる予定だったらしい。 「アウブのいない土地はいくら魔力を注いでも土地は満たされません。 魔力を注いでも、注いでも意味をなさず、守っているはずの民から不満が上がる悔しさや己の無力感が貴女にわかるのですか!?」 捕らえられた旧ベルケシュトックのギーベが新たなアウブとなったわたしに訴えかける。 「いくらアーレンスバッハに新しいアウブが立ったところで、ベルケシュトックが救われるわけではありません。 アーレンスバッハと同じ色のマントをまとわされようとも、境界線によって隔てられた別の領地なのです」 土地の魔力が減り、自分達の民が飢え始める。 もっと魔力が必要だとアウブに訴えても、王族に言われて管理している余計な土地よりも自分の土地を満たすのはアウブならば当然だ。 旧ベルケシュトックはどうしても後回しにされる。 「せめて、アウブさえいてくれれば……」と願ってもグルトリスハイトを持たない王族では礎を開き直すこともできず、新しいアウブを派遣することもできない。 「王族から見捨てられ、新しいアウブが立つわけでもないベルケシュトックという土地を我等が見捨てたところで誰が咎められるというのか。 アウブのいる土地ならば、私の民が飢えることもないのだぞ。 ゲオルギーネ様は我等に希望を与えてくれたのだ!」 旧ベルケシュトックのギーベ達の言い分に、彼等も何とか自分達の民を守りたいと願うギーベなのだとわかって、わたしは一度目を伏せた。 「貴方達には貴方達なりの理由があることは理解しました。 けれど、アーレンスバッハのマントをまとって他領の魔力を奪い、他領に攻め込んでいることは事実です。 新しいアウブ・アーレンスバッハであるわたくしは、そのようなことを許すことはできません。 貴方達は重大な罪を犯した罪人です。 ビンデバルトの夏の館へ運び込んでくださいませ」 わたしの言葉にアーレンスバッハの騎士達が「はっ!」と答えて動き出す。 「エーレンフェストに来ている全てのギーベから小聖杯を奪ってください。 絶対に余所へ持って行かせてはなりません。 そこに満たされている魔力はエーレンフェストの物です」 「はっ!」 満たされないままギーベ達に配られた小聖杯まで作戦に組み込んで上手に使うゲオルギーネに感嘆の溜息を吐いてしまう。 「ぼんやりするな、ローゼマイン。 ここで大規模に魔力が奪われ、エーレンフェストの騎士団がイルクナーやこちらへ派遣されているのだ。 ゲオルギーネはおそらくエーレンフェストの街に近い場所か、すでに街に入っていると考えられる」 フェルディナンドの言葉にバッと振り返る。 頭に下町や神殿の皆の顔が浮かんだ。 今すぐにでもエーレンフェストの街へ飛んでいきたいわたしの思いが伝わったのだろう。 フェルディナンドは首を横に振って止めた。 「まずはここを終わらせよう。 旧ベルケシュトックの貴族を捕らえるのは、アウブ・アーレンスバッハの仕事だ。 その後でアウブ・エーレンフェストに街へ入る許可を取らねばならぬ。 ……アウブ・アーレンスバッハになったとはいえ、君は入れるであろうが、私やダンケルフェルガーの騎士達はアウブの許可なく入れぬからな」 いくら助力したくても入れないと言われたことで、フェルディナンドが他領の者として扱われている現状を目の当たりにした。 まだ婚姻していないのに、帰りたいと思っても許可なく自宅へ入ることさえできないのだ。 そんな状況ではとてもエーレンフェストを自分の居場所とは思えないだろう。 ……フェルディナンド様は絶対に帰してあげなきゃ。 決意を新たにした時、上空で見張っていた騎士からオルドナンツが飛んできた。 「フェルディナンド様、オルドナンツを受け取った小隊が騎士団と合流するように動き始めました。 全ての小隊に合流されると、一気にギーベ騎士団が潰されてしまうかもしれません」 赤茶の土地が広がるのではなく、藤色のマントが主戦場に向かって移動し始めたらしい。 そこにもう一つのオルドナンツが飛んできた。 こちらのオルドナンツはフェルディナンドではなく、わたしのところへ飛んでくる。 「ローゼマイン様、マティアスです。 罠の破られている小屋を発見しました。 グラオザムがこの土地にいることは間違いありません」 「ボニファティウス様の罠が破られたのか。 予想よりも手強そうだ」 フェルディナンドが小さく呟いた。 おじい様とマティアスが張っていた罠だ。 そう簡単に破られる物ではないと思っていたけれど、グラオザムには破られてしまったらしい。 胃の辺りがきゅっと引き絞られたように痛んだ。 「マティアスはこちらに合流させよ、ローゼマイン」 「はい」 わたしはマティアスとラウレンツに戻ってくるように返事を飛ばす。 入れ替わるようにオルドナンツが飛んできた。 「フェルディナンド様、ダンケルフェルガーがもう一つ小隊を潰しました」 「よし。 シュトラール、罪人の輸送の指揮を取れ。 ローゼマイン、小聖杯を回収した後、旧ベルケシュトック騎士団を中央突破し、主戦場のギーベ騎士団に合流するぞ」 絶対にレッサーバスから頭や手を出さず、周囲で誰が攻撃されても目を逸らさずについて来いと言われた。 「頑張ります」.

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W/N: Глава 523/Японский

ギーベ・ゲルラッハ

表題 本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~• 著者 香月美夜(かづきみや)• ジャンル ファンタジー• 出版社 TOブックス• 初出 小説投稿サイト「小説家になろう」• 連載期間 2013年9月~2017年3月(全5部677話完結)• アニメ 第1部 2019年10月~12月(全14話) 第2部 2020年4月~6月(全12話)• コミック 第1部・第2部 鈴華 著 第3部 波野涼 著 あらすじ この作品は,「小説家になろう」で連載された異世界転生もので,書籍化され,アニメ化され,コミカライズされ,ラノベガイドブック『このライトノベルがすごい! 』の単行本・ノベルズ部門で2018年と2019年に1位を獲得している。 故に「ラノベ」と呼ばれる作品群に含まれると思われるが,壮大な世界観や練り込まれた舞台設定はとても「ライト」と言えるものではなく,ハリー・ポッターシリーズにも匹敵するほどのしっかりとしたファンタジー小説であると思う。 長い長い物語だが,表題が全てを語っている。 本狂いと言っても過言ではないほど本が大好きな女性が,司書になる夢を叶える直前に死亡。 兵士の娘マインという5歳の病弱な少女として異世界に転生する。 しかし,マインが転生した家には本の1冊どころか,文字が見当たらない。 識字率がとても低く,紙も印刷技術も存在しない世界だったのだ! その世界の本は羊皮紙に手書きで作る大変高価なもので,下町の労働者階級であるマインの家族には無縁なもの。 両親は本と言われても「意味わからない」って感じだし,まともに字を読むこともできない。 生活レベルは11世紀とか12世紀くらいだろうか。 トイレもシャンプーもないクオリティの低い生活であっても,本さえあれば耐えられる! そう思ったのに,本はないし,両親はひどく教養がない。 マインは絶望し,怒り,不屈の精神で本に囲まれて暮らす生活を目指し始める。 本がないなら作ればいいじゃない。 司書になってやる! 現代日本で読書をしまくって得た知識を生かし,マインは文字通り下剋上を繰り広げる。 紙の製法を確立し,職人を囲って活版印刷機を作り,本を出版し,人々の教養を高め,それらの過程で自らも平民から貴族へ,領主の養女へ,やがては女神の化身と言われるまでに地位を上げる。 そして最後には「本に囲まれた生活」を実現させるのだ。 第一部から第五部までの構成は下記の通り。 第一部は単行本3巻に渡るが,プロローグみたいなものだ。 物語が進むにつれ,世界観が明らかになり,領地から国へと舞台は広がっていく。 第二部が全4巻,第三部が全5巻。 第四部が全9巻。 電子書籍(Kindle)では各々合本版が出ているので,そちらを読むと便利だ。 第五部は書籍化途中だが,続きが気になったらWebで読める。 本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘」(全3巻) 第二部「神殿の巫女見習い」(全4巻) 第三部「領主の養女」(全5巻) 第四部「貴族院の自称図書委員」(全9巻) 第五部「女神の化身」(?) 何しろ冊数が多いので,電子書籍の合本版がお勧め。 転生したマインは近所の子供達と一緒に森へ出かけるようになる。 森で生活に必要な食料や薪などを採取するのは,子供達の重要な仕事なのだった。 そこでマインは近所の面倒見が良く優しい少年ルッツと親しくなっていく。 また父の仕事場を訪れた時,父の部下で文字が読めて計算が出来るオットーという男性と知り合い,文字を習う機会を得る。 商人になる夢を抱いていたルッツに,以前は商人だったオットーを紹介して欲しいと頼まれたマインは気軽に紹介するが,そこにオットーの義理の兄,ギルベルタ商会の主人ベンノが現れる。 そしてマインはベンノという後ろ盾を得て,紙作りを始める。 紙作りや髪飾りなどの商品を売るようになり,マインとルッツは商業ギルドへ登録。 ギルド長の孫娘フリーダと知り合って,マインの熱が「身食い」という魔力によるものだということがわかる。 身食いは貴族が持つ高価な魔術具を使わないと,遠くない未来に命を落とすことになるということだった。 しかし,マインは貴族へ自分を売り込むことより,残された時間を家族と過ごすことを選ぶ。 そんな中で,マインとルッツは揃って洗礼式を迎え,儀式のために神殿を訪れる。 どうせ死ぬのだと思っていたマインだったが,神殿で巫女見習いになることが決まり,生きながらえることが可能となる。 巫女見習いとして神殿に入ったマインの1年間。 神殿に入ったマインが考えることは図書館で読書をすることばかり。 静かな読書時間を確保したいがために何故か孤児院長をすることになる。 だが,孤児院をマイン工房にすることで,紙の製造を進めていく。 また前世で食べていた美味しい食事をもう一度実現したいという想いから,ルッツやベンノを巻き込んでイタリアンレストランの準備を始め,活版印刷のために職人を探したりと奔走しまくる。 自分のやりたいことしか見えていなくて,この世界では誰も知らない「グーテンベルク」の名前を出し勝手に称号にしてはしゃぐマインがウザくてたまらないが物語は面白い。 領主のジルヴェスターが登場し,物語は大きく動く。 マインはローゼマインとなり,カルステッドを父としエルヴィーラを母とする上級貴族の娘として洗礼を受ける。 その後,領主ジルヴェスターの養女となり貴族院に入るまで,神殿と城との往復生活が描かれる。 貴族関係の登場人物がいきなり増える。 母となったエルヴィーラに兄となったエックハルト,ランプレヒト,コルネリウス,養父母のアウブ・エーレンフェスト(ジルヴェスター)と第一夫人フロレンツィア,義理の兄ヴィルフリート,義理の妹シャルロット,新たな護衛騎士のブリギッテとアンゲリカ,新たな側仕えリヒャルダとオティーリエ。 ハッセの町に新しい孤児院を作ったり,ブリギッテの故郷であるイルクナーで紙作りなど事業を広げていく傍ら,貴族の派閥争いの陰謀に巻き込まれていく。 2年間のユレーヴェの眠りから覚めたローゼマインは10歳で貴族院に入る年齢。 眠っている間の遅れを取りもどすためフェルディナンドから詰め込み教育を受け貴族院へ向かう。 教師や新しい側近,他領地の領主候補生や王族など新たな登場人物で物語に深みが増す。 2年間眠っていたローゼマインは,ただでさえ小さかったのに2年間を失い規格外の小ささ。 一人だけ小さくて目立つのに,貴族院でも図書館まっしぐらの考え無しの行動で悪目立ち。 麗乃時代(前世)はこうだったからと単純に気安く言動する稚拙さが不思議すぎるが,ヴィルフリートとコルネリウス,そしてリヒャルダのローゼマイン管理の優秀さは一つの見どころ。 貴族院に入って,貴族の印であるシュラーブを得て,通信手段のオルドナンツを扱えるようになる。 またディッターという貴族の騎士達が好む独特のスポーツが登場。 貴族院で注目を浴びるローゼマインをエーレンフェストに留めておく策として,ローゼマインとヴィルフリートは婚約することになる。 隣の大領地アーレンスバッハや領地内の旧ヴェローニカ派貴族との軋轢の中で,ランプレヒト兄様に花嫁がやってくる。 貴族院での2年目が始まる。 ハンネローレやヒルデブラント王子と共に図書委員をすると張り切るローゼマイン。 魔石の作り方の実習や,名を捧げたいと悩むローデリヒ,エーレンフェストの森へ現れた質の悪い魔物ターニスベファレンとの戦いなどなど。 ターニスベファレン退治の件での事情聴取や魔石のネックレスなど,とにかくフェルディナンドの優秀さが際立つ。 ローゼマインの保護者たちは報告を受けながら胃に穴があきそうだ。 ターニスベファレンの件で聖典に注目が集まり,物語が更に動き始める。 関連して,中央の聖典至上主義者と王族の問題など,視点がエーレンフェストから国全体へと広がっていく。 ローゼマインの貴族院での2年目が終わり,頼もしくローゼマインを守っていたコルネリウス兄様とハルトムートが卒業。 王命が下ったフェルディナンドは,エーレンフェストを去って行く。 ネタバレ上等!言いたい放題 以下,ネタバレ無視で書き殴った好き勝手な感想。 本編を最後まで読み終えた方か,ネタバレを気にしない方のみご覧下さい。 主人公たるマインが兎にも角にもマジウザい! 「小説家になろう」冒頭の作者コメントで,作者自らが注意を促している。 曰く, 最初の主人公の性格が最悪です。 ある程度成長するまで、気分悪くなる恐れがあります。 正直言って本当に主人公の性格は最悪だ。 私に言わせれば,ある程度成長しても別に性格は改善されない。 マインは自分のことを「自重を忘れた女」と称しており,本人にもそういう自覚はあるようで,実に快いまでに自己中の極みを貫く。 私は最後まで読み進んでもその性格を好きになれなかったし共感もできなかった。 最後までマインのことは嫌いだった。 そもそも,元の世界では成人し大学を卒業し司書として就職まで決まっていた大人の記憶を持っているマインなのに,何故ここまでバカなのだろう?というのが最初の疑問。 司書になれるほどしっかり勉強した人が,家の中の様子を見て,本が存在しないか,こんな貧乏な家には無縁な高嶺の花であることくらい容易に想像できないのだろうか。 前世の記憶を持っていても,5歳の少女の肉体に住んでいるため,身体が持つ幼い思考に引きずられているのだろうかと考察することもできる。 だが,そうであるなら,本を作るために頭脳から引き出される知識は生半可ではない。 いや,生半可どころの騒ぎではなく,専門書がそのまま頭に詰まっていても無理なレベルだ。 あまりにもアンバランスだと思う。 物語を楽しむために,これらの矛盾は「俺TUEEEな転生チート」だと目をつぶることにしたのだが,引っかかりは消えなかった。 前世への異常な執着がマインのウザさに拍車を掛ける。 活版印刷技術の発明者とされるヨハネス・グーテンベルクは,この世界では確かに偉人だ。 だが,この世界でだって11世紀や12世紀の人々に「グーテンベルクだよ!」と言ったところで理解されない。 それなのに,マインは異世界の印刷技術以前の人々に向かって「グーテンベルク!」なのだ。 意味不明に決まっていることが分からないのだろうか。 大卒の図書館司書に分からない筈はない。 相手が分からないに決まっていることを知りながら,わざと意味不明な単語を使っているのか? 興奮のあまりそういった分別を失うほど人間性が未発達なのか? グーテンベルクに限らず,このように前世の単語を当然のように持ち出して会話相手に突きつける事例はいくらでもある。 極めつけが最後に領地の名前を決めるときだっただろうか。 アレキサンドリアかベネツィア? 別の世界の実在の街の名を領民全体に押しつけるとは! いやはや私だったら心底止めて欲しい。 異常と言えば,マインの家族への執着も迷惑なレベルだ。 最初は本のために幾らでも利用し犠牲にする感じだった家族だが,前世の母親への申し訳ない気持ちを思いだした途端に最重要な存在となる。 生まれた途端に引き離され会うこともなかった弟までを溺愛する。 家族は領地の外へまでもマインについて行くが,詳しく書かれている街のギルドや組合の仕組みを考えると無理無謀な行為にしか見えない。 マインに触発されて子供の頃から頑張った姉のトゥーリだけなら,マインの行く所へついて行って仕事をしようとするのもまだわかるのだが。 義理の妹シャルロッテに対してお姉様ぶりたい要求の激しさにも辟易だ。 バカなの? 魔力や座学など能力だけ高く生意気で自己中な養女のマインが,そこまで尊敬と憧憬の念を持って領主一家の子供達に受け入れられ大切にされることが,とても不自然に思えた。 ヴィルフリートもシャルロッテもメルヒオールも,嫉妬心など邪な心は一切無い澄み切った心を持つ人格者なのだろう。 そうとしか思えない。 ほんと,この自己中で暴走だらけで自重を捨て去ったトラブルメーカーのマインが,義理の家族や側近達に非常に大切にされ愛され尊敬されていることが,最後まで不思議かつ納得できなかった。 ただ,マインの活動は領地や国家に大きな利益ももたらすので,利益を考えれば合点がいく気もする。 マインの魔力が王族などものともしないほど強大で,しかも全属性であるとかチートすぎるわけだが,一応マインが全属性であることや魔力が強くなったことは,この世界の仕組みに基づいて理屈で説明されている。 マインの自己中で破綻した性格は,大変不快なものではあるが,このように某かの大きな事をやり遂げ世界を変えてしまうような人には,こういった周囲の人のことなどお構いなしに突っ走るような異常さが必要なのだろう。 周囲の人々に気を遣い,やりたいことを我慢するような心優しい人がマインのような業績を残すのは,難しいかもしれない。 ローゼマイン(マイン)にはイライラさせられっぱなしだったが,偏った分野では非常に賢いし機知に富んでいて面白い。 下町の面々は隠し部屋と寝台。 お父様と養父様は、他者の進入を防ぎ守り外に出さないための扉。 エルヴィーラとリヒャルダは暖炉。 明るく暖かく必要だけど近づきすぎると火傷する。 護衛騎士たちは大切な物を守ってくれる本棚。 ダームウェルは鍵のかかる書箱。 神殿の側仕えは執務机。 公私の仕事をし本を読む。 ヴィルフリートは背もたれがない椅子。 ひと息つけるけど寄りかかれない。 前ライゼガング伯爵は暖炉の上の棚の細かい細工の置物。 フェルディナンドは長椅子。 本を読んで寛げる。 でも完全に身体を預けて眠ってしまうとあちこち痛くなったり風邪を引いたりする。 もし彼がいなければ,マインは魔力の威圧で神殿長を殺し,その罪で処刑され,物語は第一部でさっさと終了してしまったことだろう。 そもそもフェルディナンドは,マインが神殿長を威圧したとき,何故止めたのだ? 放置してマインに神殿長を殺させれば,神殿長に苦しめられていたフェルディナンドとしては万々歳ではないか? これだけの魔力を持つマインは,今現在エーレンフェストに不足している魔力を得るための貴重な存在なので確保しておくべきと,瞬時に判断したのだろうか。 しかも,フェルディナンド自身も威圧に巻き込まれて辛い状況の中だったにもかかわらず,少ない言葉でキチンとマインを正気に戻した。 優秀すぎる。 マインが巫女見習いとして神殿に入った時,フェルディナンドは確か21歳。 幾ら貴族院で全て最優秀の成績を収めた秀才で,領主の弟として貴族社会及びユルゲンシュミット(国)について詳しい知識を持っていたとしても,たかが21歳だ。 大学3年生程度の年齢だ。 それなのに神殿業務をほとんど請け負い,領主の仕事を手伝い,騎士団の仕事を手伝い,その上マインの面倒まで細やかに見る。 いや無理でしょう。 できすぎ。 そう,「マインの面倒を見る」というのは並大抵の子供の監視ではないのだ。 マインは貴族や神殿の常識を持たないことは勿論,前世という異世界の常識で動き,次々と想像を絶した問題を起こし,敵を作りまくる。 しかもマインはこれまた想像を絶した虚弱体質で,非常に気をつけていなければ簡単に熱を出して倒れる。 そんな非常識の化身のような彼女の尻拭いをし,教育を施すのだ。 マインを教育し導くためにはマインを理解しなければならないわけだが,異世界の常識で動く彼女を理解するにはもの凄く柔軟な発想力が必要となる。 だが,フェルディナンドは優秀な頭脳と論理的思考によって,この上なく上手にマインをコントロールするのだ。 フェルディナンド自身の環境により必要だったにしても,製薬に精通し,虚弱なマインが活動できるように専属医師&専属薬剤師として健康管理まで完璧にこなす。 チート過ぎる。 結局のところ,優秀で努力家でやることなすこと規格外で刺激的なマインをフェルディナンドはかなり初期から気に入っており,ローゼマイン(マイン)がしでかすあれこれに翻弄されつつ面白がってもいたのだろう。 物語後半になって徐々に,フェルディナンドがマインと双璧を成す規格外であることが分かっていくが,ユルゲンシュミットの建国神話に登場し歴代ツェントにグルトリスハイトを授けてきたエアヴェルミーンに対し,フェルディナンドは非常に無礼な態度で接し嫌われていることに驚いた。 マインに対してあんなにも貴族らしく上品に振る舞うよう教えていたのに,実のところ,彼自身,見事に表面上取り繕っていただけだったのだ。 本質は回りくどい貴族の習慣とは正反対の合理主義者で,目標を達成するために必要とあらば最短で動く。 フェルディナンドは本質的にマインとそっくりな性格なのだった。 兎にも角にも,フェルディナンドが存在し,フェルディナンドがいるエーレンフェストにマインが生まれ二人が出会う。 この二つがなければユルゲンシュミットは崩壊したであろうし,ユルゲンシュミットで印刷技術が発展する機会は何世紀も先になったことだろう。 アダルジーザの実であるフェルディナンドがエーレンフェストの領主一族として生きながらえていたことは奇跡であるし,異世界から転生した異常な性癖(本好き)を持つローゼマインの存在も奇跡。 二つの奇跡が絡み合って事が進んでいくのだから,マインの転生はそもそも英知の女神メスティオノーラが仕組んだこととしか思えない。 ローゼマインの側近たちが面白い マインがローゼマインとなり貴族社会に取り込まれた時に,カルステッド一家や領主一家など登場人物がどっさり増えるが,その後ローゼマインが貴族院に進学すると,更に側近たちがどっと加わり,登場人物を覚えるのが大変になる。 しかし,この側近達が各々個性豊かで面白い。 是非とも全員の性格や役割を把握しておくのがお勧めだ。 人気投票で常に上位に食い込むのはダームエルだったようで,確かにマインの最初の側近であるダームエルは,最後まで優秀な側近として活躍する。 しかし,他の側近達もなかなか楽しい。 ローゼマインの義兄で,ローゼマインが領主の養女となった時からずっと護衛をするコルネリウス。 本当の兄のようにローゼマインと仲良しだし,過保護だ。 しかしそもそもの血筋が良いせいか,優秀でどんどん頼りになる護衛騎士に成長していく。 コルネリウス兄様がいてくれると,私はいつも安心して読み進むことができた。 アンゲリカの卒業後,コルネリウスの存在がどれほど心強かったか。 コルネリウスの卒業後はどうしようかと思ったほどだ。 その後はコルネリウスの婚約者レオノーレや旧ヴェローニカ派のマティアスなどがしっかり護衛してくれ安心だったが。 コルネリウスと同じくローゼマインが領主の養女となった時からの護衛騎士,アンゲリカ。 彼女はどう見ても良家のお嬢様にしか見えない美少女なのに頭を使うことが大嫌いで,騎士としては実に優秀。 優秀な部分と残念な部分の落差が面白く,アンゲリカが出てくる度に楽しかった。 脳筋の愛されキャラだ。 ローゼマインの義兄エックハルトとはお互い明後日の方向でお似合いで,アンゲリカとエックハルトの結婚生活というものがあるとしたら見てみたいものだと思う。 貴族院以降の側近で最重要人物はハルトムートだろう。 とにかくとても優秀でキモイ。 ローゼマインを心底崇拝し,ローゼマインの素晴らしさを布教するために全力でその優秀さを使うのだ。 頼もしいことこの上ないし,キモイことこの上ない。 この若さでこんなにも優秀なのだから,将来はフェルディナンドに名を捧げて仕えるユストクスに負けない文官になること請け合いだ。 同じく異常なまでにローゼマインに心酔しているクラリッサとの婚約は,ローゼマインとフェルディナンドと同じくらい運命的な組み合わせと言えよう。 クラリッサも実に危なっかしく優秀で頼もしかったものだ。 しかし基本的に自分勝手で非常識なローゼマインが,余りある欠点を全て受け入れた上で側近達に尊敬され大切にされることは,やはりとても解せない気がした。 側近はローゼマインの保護者たちによって厳しく選別され吟味されて選ばれているのだし,派閥争いなどを考えれば自分にとって都合が良い人物に肩入れして仕えることになるのはわかるが,能力は高いのに非常識な姫君など,裏では嫉みそねみ失笑の対象になりそうなものではないか? 彼女の身内のためなら何だってする性格は,優しさとはちょっと違う気がする。 ローゼマイン,あんなに性格が悪いのに尊敬されすぎだし愛されすぎだ。 マインの家族が不思議 マイン時代の下町の家族は,マインがどんな立場になろうとも見捨てることはなく見守り続ける。 マインと姉のトゥーリはめちゃくちゃ仲が良いし,父親は命を省みない子煩悩。 母親は父より落ち着いているが,マインのために行動する覚悟は父親に負けない。 だが,仲の良い家族,愛に溢れた家族などという言葉一つで説明できないほど,いつまで経っても彼らはマインとの関係を重要視し続ける。 彼ら自身の下町に根付いた生活があるはずなのに? 姉のトゥーリがマインやルッツに刺激を受けて上を目指して頑張るのは,まだわかる。 だが,マインが街を出て移動するなら自分もと,幾ら仲が良かったとしても姉がいつまでも思い続けるだろうか。 幾ら仲の良い姉妹であっても,成長し,成人し,幼い頃考えていたのとは異なる人生を歩んでいくのが普通だと思う。 姉には姉の人生があり,恋人が出来たり,他にやりたいことができたりするだろう。 が,トゥーリの眼中にはそういったことは一切なく,将来マインが街を出て領地を出て行くならば,自分もマインについて行ってマインの役に立つ仕事をしようと考え,実行し,成人してもそれを貫く。 最後には両親もトゥーリも,マインには思い入れがないはずの弟のカミルまで,領地をまたいでマインのいる街へ引っ越して行く。 トゥーリと母のエーファはローゼマイン専属職人という建前があるが,父親はその家族として仕事も辞めて引っ越すのだ。 街の職人達には各々ギルドがあって職人の世界にはしっかりしたルールがあるはずなのに,そういうのは良いのだろうか。 マインが貴族界へ引き取られ,元の家族とは一切関係ないと契約魔法を結んでから,トゥーリが成人するほどの長い年月が流れているのに。 ルッツやベンノなど商人達がローゼマインと共に移動して仕事をするのはわかるのだが,マインの家族に関しては何だかできすぎみたいな印象だった。 重ねて言おう,マインあんなに性格が悪いのに異常なまでに愛されすぎだ。 神話で彩られた世界観がよく作り込まれている 魔力が存在する世界が舞台となる物語は珍しくないが,ここまでしっかりと神話が作り込まれている作品は少ないのではないかと思う。 闇の神に光の女神,その子供達である五柱の神々,水の女神フリュートレーネ,火の神ライデンシャフト,風の女神シュツェーリア,土の女神ゲドゥルリーヒ,命の神エーヴィリーベ,そしてその神々の眷属。 神々の属性と貴族が持つ魔力は対になっており,自然現象までもが神々のご加護と魔力で説明される。 第一部では魔力は商人の契約魔法程度しか登場しないが,物語が進み世界観への理解が深まるにつれ,魔力と神々の関係が細やかに設定されていたことに気づき感動した。 神話と世界の一体感がすごくて,この世界が実在していないのが不思議になったほどだった。 政治の仕組みは雑すぎる ツェント(王)がいて国を治め,アウブ(領主)がいて領民を治め,ギーベがいて領地内の地域を管理する。 年に一度の領主会議で国の重要事項は決定される。 領主会議に出席するのは,王と領主と領主の第一夫人だ。 領地内は貴族の冬の社交で何となく決まる? 王の命令には逆らえず,ほぼ絶対王政。 領地内では領主に逆らえないが,大領地・中領地・小領地などの身分差で領主も他領地との関係は自由にならない。 議会のような制度はなさそうで,王命と領主会議だけで国が動いているようだ。 マインの父親は兵士だが,軍隊の指揮系統がどのようになっているのかは謎。 アウブの護衛は騎士団が行い,騎士団と軍?の関係もよくわからない。 そもそも「兵士」は何に属し誰の指揮で動いているのか? 法律の仕組みも分からない。 まぁこのような設定がよく分からなくても物語には関係ないし,面白かったので特に問題は感じなかったのだが。 玉川上水の羽村取水口のすぐ下流側の多摩川に架かる、 歩行者と自転車専用の橋が、羽村堰下橋だ。 この記事で歩いた部分を青線で示す。 地図はクリックすると拡大して見られる。 橋の上からは、羽村堰と羽村取水口がよく見える。 羽村堰下橋の親柱(写真はクリックで拡大) 羽村堰下橋 多摩川の上流方面には羽村堰の複雑な風景が広がる。 多摩川 上流側• 羽村堰下橋から見た羽村取水口あたり 下流方面には羽村大橋が見える。 羽村大橋は、羽村市とあきるの市を結んでいる。 多摩川 下流側• 羽村堰下橋から見た羽村大橋 多摩川を渡る長い橋だが、 風景を楽しんでいるうちに渡り終わってしまった。 羽村取水堰あたりの川原には、水辺で寛ぐ人々の姿が見られた。 羽村堰下橋から見た多摩川 橋を渡ったところには、 羽村市郷土博物館と、 武蔵野の路「滝山・草花丘陵コース」の案内板があった。 羽村堰下橋の南西側の道標• 武蔵野の路「滝山・草花丘陵コース」の案内板 このあと、多摩川を遡って河岸を歩き、 羽村市郷土博物館へ向かった。 川縁の道は緑豊かな気持ちの良い散歩道で、 歩きながら振り返ると羽村堰下橋の全景がよく見えた。 羽村堰下橋 羽村市郷土博物館へ続く多摩川縁の道.

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